第32話
「こちらになります、山路様は9階になります……あっ須藤様…ご一緒で構いませんか?」
ボタンを押すと、もう先に乗っていた客がいたらしくドアが開くと人がいた。
ここのVIPな顧客であろう事はこの人の顔色でわかった。
最悪だ。
エレベーターでしかも1階のここでたまたま人が乗ったあとにドアが閉まった瞬間にボタンを押さなければほとんどの確率で誰かと乗り合わせる事はない。
しかも、ここは確か契約客の方のエレベーターだけだが、上り専用、下り専用があったはずだ。
このホテルの1つの売りだった気がする。
「ああ、構わないよ」
そう低い声でエレベーターの中の人に言われると、私を案内してくれる人の表情がホッとした顔をした。
相当の客か…
知り合いじゃなければいいが…。
こんな閉鎖空間でバレないとは言い切れない。
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