桜日side
いつもは平気だったのに、最近不安になる事が多かった。
ぼっと何もない桜の木を見ていたら、また病室のドアを引く音が聞こえた。
「村田桜日ちゃーん、検診のお時間ですー」
聞こえてきたのは新人の看護師さんの声。
「はーい」
ベッドの下に置いてあるスリッパを履いて、ドアへ向かった。きっと良くなってると信じている。
あれから全然発作なんて出てないから。
新人の看護師さんが微笑んで歩き出した。私は静かについていく。きっと大丈夫だと信じて。
「余命…?」
唖然と担当医の先生を見つめる。先生も今まで見たことがないくらい、暗い顔をしている。
「すまない。君のお母さんとお父さんと一緒に言おうと思っていたのだが…。桜日ちゃんもう大人だから。桜日ちゃんの心臓はもう持たない…。心臓以外にも他の臓器にも転移しているんだ。もう、手の施しようがない…」
「どうして!!ペースメーカーも埋めて、もうこれで大丈夫って言ってくれたのに!!諦めないのがお医者さんじゃないんですか!?」
勢いよく立ち上がって先生に向かって言う。
「余命…一ヶ月なんて…」
力が抜けて座っていた椅子に座る。
「でも桜日ちゃん、今までだって頑張ったじゃないか。心肺停止になった時も、君は息を吹き返したじゃないか。余命はだいたいだから、きっと前みたいになれるさ」
そう先生は元気づけるように言った。
「はい…」
「ありがとうございました」
静かにドアを閉める。さっきの看護師さんはいなくなっていた。一人で帰れってことか。それとも、気を使って一人で帰らせてくれたのか。
廊下を歩いていると、病室の前にある椅子に腰掛けていた春人が見えた。私は歩くスピードを上げて春人に近づいた。
「よっ!どうだった?検診」
さっきの暗い顔は捨てて明るい顔で、いつものテンションで春人に言った。
「おかえり。長かったな。俺、このままいくと退院だって!良かったぁー。やっと病院から出られるわー」
春人は頬を緩ませて言った。私もほっと一安心した。
「そっか。やったじゃん!!」
そう言って春人の肩を叩く。
「桜日はどうだったの?」
春人は真っ直ぐこちらを見て言った。
「あぁ、いつも通りだって」
ちょっと笑顔を作ってそう言ってみせた。春人も安心したような顔をした。
「桜日も良かったじゃん。悪くなってないなら、それでいいよ」
そう言って笑いかけてくれた。さっきの事もあり、泣きそうになる。
「そうだ。俺、これからの事考えたんだ。病室行って話そうよ」
春人は立ち上がった。
「うん」
春人の隣を歩き、病室へ向かう。
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