第32話
「あんな校内一の有名人と毎日絡んでて、本当にあの人のこと何にも知らないもんね、間宮は」
「興味もないし全然知りたくもないから、それ以上何にも言わないでね」
今まで心の底からそう思っていたのに、少し変わりそうになっている心境に気付かされて、美紅はそれを誤魔化すように天野を睨んだ。
けれど、
「皆が知ってるレベルの情報しか知らないけど、知りたくなったらいつでも言ってね」
天野のニヤニヤは直らなかった。
――その日の放課後。
美紅は、右京のいつもの誘いは事前に断って、この日は生徒会室にいた。
実は学力特待生としてこの高校に入学した美紅には、学費の一部を免除してもらうにあたり、いくつかの条件が課せられている。
その中の一つが、部活動に関すること。
優秀な成績を維持するために、勉強の時間が大きく削られる運動部への入部は不可というものと、生徒たちにとっての模範生となるべく生徒会執行部への入部は絶対というもの。
文化部とのかけ持ちの入部は可能だが、美紅は少しでも多くの時間を勉強にあてたいと思っているので、所属は生徒会のみにしている。
その生徒会の会議が今日行われる予定だったので、それが終わるまで右京を待たせるのも申し訳ないという理由で、彼との約束を断っていた。
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