第31話

それでも、



「あの目は、本気ガチだ……」



購買で取り引きした時のことを思い出したのか、天野は美紅の机の上を見るともなく見つめたまま、ぼそりと呟いた。



「右京先輩の目って、感情が全然読み取れなくない?」



他の人に比べて、美紅は彼と過ごす時間が長いはずだが、そんな美紅ですらも、右京が何を考えているのか読めなくて困ることが多い。



あんなにも真っ直ぐに見つめられているのに、視線と視線がぶつかるその間に、見えない壁でもあるかのような不思議な感覚に陥る。



「それは先輩が基本ポーカーフェイスだからじゃない?」



天野の中では、右京は単に『何を考えているのか分からなくて当然な先輩』くらいの認識しかしていない模様。



「間宮と一緒にいる時の先輩はコロコロ表情変わるから、間宮はまだ読みやすいと思うけど」



「……」



美紅が言いたいのはそういうことではないので、不服そうな顔をしていると、



「何? やっと先輩のこと知ろうって気になったの?」



天野がニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべた。

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