第30話

右京と別れ、自分の教室に戻った美紅は、



「間宮! ホントーにごめん!」



焼きそばパンとメロンパンを美味しく食べたであろう天野に思い切り謝られた。



両手を頭の上で擦り合わせながら謝ってくる天野の口の周りには、メロンパンの細かいくずが付いたまま。



そんな彼女に、美紅はポーチから取り出した手鏡と可愛らしい花柄のケースに入れたポケットティッシュを手渡してやりつつ、



「次やったら二度と宿題のノート見せないから」



真顔で脅しをかけた。



「や、あの……すんませんっした!」



天野は勢いよく頭を下げてから、美紅の鏡とティッシュを受け取り、口元をふきふき。



「……でもさ、間宮」



「何?」



不機嫌そうな美紅にビビりつつ、天野は美紅の隣の空いている席に勝手に座る。



借りた手鏡とティッシュは美紅の机の上にそっと返した。



「右京先輩ってさ……間宮のことガチじゃない?」



天野に上目遣いで恐る恐る見つめられた美紅は、



「さっき、他校に彼女がいるって認めてたからガチじゃないよ」



何でもないことのようにさらりと答えた。



「ていうか、右京先輩のこと気を付けろって言い出したのはあまちゃんじゃん」



「いや……私も、先輩っててっきり間宮が可愛いからちょっかいかけてるだけかと思ってたんだけど……」



美紅にじろりと睨まれ、天野は気まずそうに頬を掻く。

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