第27話

「美紅の飲まない方でいい」



右京の表情は相変わらずで、やっぱり今日は特に居心地が悪い。



「じゃあ、フルーツ・オレの方飲んで下さい」



「美紅はいちごミルクが好きなのか。覚えておこう」



そう言って、美紅の差し出したフルーツ・オレを受け取った右京を見て、



「……」



美紅はそういえば、右京のことはほとんど何も知らないなということに気が付いた。



右京は美紅のことをどんどん知っていっているのに、自分は――



右京のことなんて、興味がなかったはずなのに。



なんとなく、知りたいと思ってしまっている……ような気がする。



美紅が知りたいと言えば、彼は素直に教えてくれるだろうか。



「あの、先輩。ちょっと聞いてもいいですか?」



「何だ?」



右京が弁当を食べる手を止めて、美紅を真っ直ぐに見る。



美紅が何かを話す時、彼は必ず手を止めて美紅の目を見ようとする。



他人とは壁をつくりがちだと噂の彼は、もしかすると美紅になら、素直に答えてくれるかもしれない。



「先輩って、他の学校に彼女さんがいらっしゃるんですよね?」



「……」



“彼女”という単語を耳にした瞬間、右京の目が優しいそれから氷のような冷たいものへと豹変した。

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