第7話

――放課後。



「美紅」



右京が来てしまう前に、さっさと逃げ帰ろうと慌てて教室の扉を開けた美紅の眼前に、その右京が立ちはだかった。



SHRが終わったらすぐに席を立てるように、市川が話している間はずっと通学鞄の取っ手に腕を通して準備していたのに。



今日のSHRは割と短めで終わったから、三階にあるこの教室に、一階の教室からやってくる右京に鉢合わせることなく逃げ帰れると高をくくっていたのに。



「送ってく」



一人で帰りたいと断りたいのに、その右京の短い一言は酷く息切れしていて、上下に揺れている肩を見ただけで、何も言えなくなってしまう。



「ほら。行くぞ」



美紅が逃げないように、彼女の手首を掴んだまま歩き出す右京。



恋人同士ではないので、手を繋いで歩いたことも当然一度もないが――



「……なんで、毎日送ってくれるんですか」



彼に送ってもらう理由が、そもそも分からない。



「何だろうな。美紅が、放課後誰かに呼び出されるのを防いだり……帰りの電車で痴漢にあわないようにするため……とかか?」



そんなことを答えた右京が美紅から手を離したのは、靴箱の前。



クラスも学年も違う右京の靴箱は、美紅の所からも随分と離れた所にある。



美紅は、自分の靴箱からローファーを取り出そうとして――



「!」



靴の上に、小さなメモ用紙が置かれているのを発見した。

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