第12話
残念ながらrioはいなかった。
人間だもの、いつもここに居れるわけでも無いだろう。今日は他の女性を見に行く気にならず、小説を読むことにした。異世界転生ものが好きだ。いきなり違う環境に飛ばされて成長していくストーリー。奇想天外な出来事。現代社会では手に入らない夢物語。
たぶん先日までの俺は異世界転生小説に癒されていたんだろう。
自分では考えられない別世界で、知らないうちにストレスを消化していたのではないだろうか。
でも今の俺はrioによって気づきを得た。
今の世界は同じ世界なのに、まるで違う世界だ。ある意味転生した気分だ。
心にへばりついてた塵、埃、ゴミが少しづつ剝がれて心の目が開きつつある。
自分で目を閉ざしてしまった愚か者はいなくなった。
こんな気持ちを持って、新しい職場に行けるなんてrioに感謝しかない。
会えなかったが穏やかな気持ちで眠ろう。
すっきりと目覚めた朝。大きく伸びをする。
トーストとコーヒーで朝食を済ます。
寝具周りカバーを外し洗濯機を回す。埃取りをして掃除機をかける。いつもはしないところまで掃除した。リセットされて気持ちいい。
昼食を取り、Yシャツとスーツを点検して靴を磨いた。
珍しく、スーパーへ買い物に行くついでに散歩しようと思った。青空だったんだ。ゆっくりとこんな店があったんだと街並みを歩く。子供たちの笑い声が響く公園。見てこなかった、ありふれた日常。人が織りなすドラマは、ここにもあった。俺は主人公じゃない。モブだ。そう思って見てこなかったのだろうか。感じられなかったのだろうか。モブでも感じることはできたのに。
残りの人生の方が少ない。遅かったけど今が転換期なんだ。小さくても大きな一歩だ。なんて言ったって恋をしたんだ。我ながら笑ってしまう。自分の中で自己解決してる恋だから、生活は変わらない。心が前向きなだけ。
スーパーに寄って家路に着く。発泡酒を開ける。夕方から飲むなんて考えられなかった。今は心に素直に飲む。美味いなぁ。ゆったりと流れゆく雲を見つめながら飲む。
誰にも干渉されず、気ままに過ごす。贅沢だ。
一本開けたところで風呂だ。いつもより温めにして長めに浸かる。汗が出る。風呂上がりの発泡酒が美味いだろう。
発泡酒片手にスーパーで買った総菜を食べる。今日は飯よりつまみの気分だった。
rioに会いに行く。今日も居なかった。体調を崩したのだろうか。あの瞳と笑顔の会いたいと思ったがしょうがない。自己解決している分、あきらめも早かった。
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