第10話

仕事帰りにスーパーに寄る。何故か自炊するかと思う。もやしと豚肉を買う。米はあったか覚えてないから二キロを買った。

家に着き着替えてキッチンに立つ。無洗米か。楽だな。炊飯器のスイッチを入れる。

炊けるまで一服だ。この炊けていく匂いを嗅ぐのも久しぶりだ。ピーピー鳴った。

フライパンを熱し油をひく。もやしを一袋そのまま入れる。豚肉を食べやすい大きさに切る。炒めていく。味付けは塩コショーだけ。

こんな飯でも、いつもより野菜を取れた気がする。炊き立てご飯をハフハフしながら食べる。炊き立ては美味いな。

時間的な楽を覚えて暮らすことは必要だった。でもひと手間かかる暮らしの方が気持ちが動く。今日だけかもしれないが、それでいい。今は人間復帰リハビリ中みたいなもんだ。無理せず進めばいいんだ。ごちそうさま。

風呂上がりに発泡酒を飲む。パソコンの電源を入れてrioに会いに行く。あぁ、この笑顔だ。瞳がキラキラしてる。男に媚びてない、前向きの笑顔だ。君に会いに来て君から勇気をもらう。いいや、そんなこじつけた言葉はいらない。rioに会いたかった。恋でもない。おっぱいがどう。ショーツがどうとかでもない。素のrioが変わっていくのをただただ見ていたいのだ。おれにとってrioはただのチャットレディじゃない。変化の女神だ。

今もrioは恥ずかしそうな顔をして微笑む。

「rioね、人見知りが強いんだ。緊張して、しゃべれないんだ。でもね、ここでは目の前にいるわけじゃないし、コメントのやり取りだから頑張れるの。それでね、見てくれるのが嬉しい。コメント貰えるのが嬉しいって気持ちが増えてきてるんだよ。応援の力って凄いなぁ。恥ずかしいことしてるのに、そんな私も見てほしいと思っちゃう。近いうちにおもちゃ買えそうだから楽しみにしてるんだ。お兄さんも楽しみにしてくれたら嬉しいな。そんなこと考えてるから変な気分になってきたよ。ウゥン。見ててね。ウゥンアッ ハァ 見てくれてる?アァァン」

いろんな人がいて、いろんな解決法を探しているんだな。正解なんてわからない。自分ができたことだから応援するじゃない。自分と違う人が悩んでいるから応援するんだ。

今日も教えてもらった。rioは俺の教科書になってくれるんだね。落ちこぼれだからリモート学習続ける。もっとrioの世界で感じていることを教えてほしいんだ。

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