第32話

「……迷惑かけて、ごめんなさい」



ケンカしてこの部屋を飛び出してからはずっと、連絡すらも取り合わなかったのに。



それなのに、私のことを心配して探してくれてたなんて。



「まぁ、ゆづに迷惑とかゲロかけられるのは別にいいんだけどさ」



……ん? ゲロ?



「心配かけさせるのだけは、やめて欲しいかな」



ナオくんは苦笑しているが、その表情よりも先程の言葉の方が気になる。



「ナオくん……私って、もしかして吐いたりした……?」



そうでないことを祈りながら訊ねると、



「え? 覚えてない? うちの玄関上がってすぐに廊下でゲーッて」



ナオくんは驚いたような顔で私を見た。



そして、その顔が段々と気まずそうな表情へと変わっていき、次第に横へと逸らされる。



「ゆづの服も少し汚れてたから洗濯したんだけど……その……」



……ん? 洗濯?



ということは、私は今は何を着て――?



不思議に思い、毛布の中の自分の体を見下ろして、



「……!」



上に持ち上げた毛布を慌てて下ろして被り直した。



……服は何も着ておらず、下着のみになっていた。

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