第31話

「俺があの場にいなかったら、お前、今頃どうなってたか……」



ナオくんの言葉を聞いて、



「ナオくんはなんであのお店にいたの?」



思わずそう訊ねていた。



「……」



ナオくんは、不機嫌そうな表情を崩さないまま、私からふいっと顔を背ける。



「……ゆづが今日、合コンに行くってこと、前もって知ってたから」



ぼそりと呟くような小声は、それでもはっきりと聞き取れた。



「なんで知って――」



「お前の友達が、わざわざそれを言いに、俺の職場まで来たんだよ」



それって、梨乃ちゃんだろうか。



「……で、今日は早番で上がりも早かったから、ちょっと様子を見ようと思って、教えてもらったお好み焼き屋に行ったら……お前、もういなかったし」



……どうして来てくれたの?



聞きたいけど、聞くのが怖い。



「まさかと思って、近くで酒を出してそうな店を一軒一軒覗いたら、案の定、潰れかけのお前見つけたし」



「……」



「心配しただろ」



そう言って私の頭を撫でるナオくんの目は……いつもの優しい眼差しをしていた。

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