第30話

確かに見た目は可愛いカクテルみたいだったけど……



「お酒……? あれ、ノンアルコールだよ?」



同じ名前のメニューでカクテルとノンアルコールがあったので、注文する時もちゃんと“ノンアルコールの方で”と伝えたし。



私の答えを聞いたナオくんは、



「……」



ますます不機嫌そうに、無言のまま眉間に皺を寄せた。



「お前、それ騙されてるぞ」



「へ……?」



「お前が飲んでたグラスの中身の匂い嗅いだけど、あれは絶対に酒だ」



「……」



私はお酒と言うものを飲んだことがないので、絶対に違うとは言い切れなかった。



「店員さん……相馬君と話しながら注文取ってたから、聞き間違えたのかな?」



うん、多分きっとそうだ。



「その相馬ってヤツと店員がグルですり替えたに決まってるだろ」



すぐにナオくんの呆れた声が飛んできた。



「な、なんのために……?」



意味が分からずに訊ねると、



「お前を酔わせてお持ち帰りするためだろ」



ナオくんの表情がますます不機嫌そうに歪んだ。

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