第29話

……頭がガンガンと痛い。



胃の中も何かぐるぐるして、めちゃくちゃ気分が悪い。



「う……気持ち悪い……」



呻くように言うと、



「もう1回吐きに行く?」



頭のすぐ傍で、ナオくんの優しい声が聞こえた。



……もう1回?



何故、既に吐いたていになってるんだろう?



不思議に思って、重い瞼をゆっくりと開ける。



ベッド脇の小さな明かりのみの薄暗い室内で、すぐ目の前にいたナオくんと目が合った。



ぐらつきそうになる頭を少しだけ動かして周りを見ると、ここはナオくんのアパートの寝室で、私はベッドの上で毛布にくるまっていて。



ナオくんは、ベッドのすぐ傍で床に膝をついた状態で、私と目線の高さを合わせるようにして座っていた。



「……ナオ、くん?」



確か、私は相馬君とお店でジュースを飲んでいたはず。



それが何故、ナオくんのベッドで寝ているのか。



「え……あれ?」



痛みと困惑でガンガンする頭を抱えていると、



「ゆづ、お前……なんで男と2人で酒なんか飲んでたんだよ」



優しかったはずのナオくんの声が、突然低くなった。

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