第10話

膝の上で肘をついて両手で頭を抱え込んだナオくんを見て、胸がぎゅっと締め付けられる。



「ナオくん……」



私はナオくんの隣に静かに腰を下ろして、その丸まった背中にそっと手を添えた。



その瞬間、



――ピリリリリリ……



どこからか電話の着信音が鳴り響き、



「!」



私は咄嗟とっさにナオくんから手を離し、ナオくんはズボンのポケットから慌ててスマホを取り出す。



画面に表示された名前を見て、一瞬だけ険しい顔をしたナオくんは、すぐにソファーから立ち上がった。



「ごめん。ちょっと……」



ナオくんはそう言うと、リビングのすぐ隣にある部屋(多分、寝室)へと移動して扉をピシャリと閉めた。



「もしもし?」



薄い扉越しに、ナオくんが声を抑え気味にして話しているのが、それでもはっきりと聞こえてくる。



「悪い、今夜はそっち行けない」



……誰かと会う約束をしていたのだろうか?



さっきちらりと見えたナオくんのスマホの画面には“桃子”と表示されていた。



“ももこ”さん、かなぁ?



どこの誰なのだろう?



そんなことを呑気に考えていると、



「だから、ごめんて、桃子とうこ。……え? 違う、俺は彼女は作らないって前から言ってるだろ」



ナオくんの、先程よりも大きなうんざりしたような声が聞こえてきた。



“ももこ”さんじゃなくて、“とうこ”さんと言うのか、へぇ。

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