第6話

「えっ!? だって、俺まだ仕事終わんねぇし……酒出してる時間帯の店に未成年をいさせるのもあれだし……」



ナオくんが、困惑したように私をちらりと見た。



……私は別に、ナオくんを困らせたくてこの店に来たわけじゃない。



「もうアイツがいなくなってるなら、平気。1人で帰れるから」



本当はただの強がりだけど、ナオくんの困った顔を、これ以上見たくはないから。



教科書の入った重いバッグを肩に提げ直し、店の出口に向かって歩き出すと、



「間宮。今日はもうこれ以上お客は増えないだろうから、お前は帰っていいぞ」



厨房の奥にいたシェフが、ひょっこりと顔を出した。



「こんな時間に女の子を1人で帰らせるバカがあるか」



シェフはナオくんを鋭く睨みつけてから、



「結月ちゃん、ちょっと待っててな。間宮のヤツすぐに着替えてくるから」



私に優しい笑みを向けてくれた。



この店のシェフは、私がナオくん目当てでよくランチで通うようになってから、私のことを娘のように可愛がってくれている優しいおじさんだ。



私の派手な見た目にとらわれずに、いつも優しく接してくれる。



「直人。今日はゆづちゃんを直人の部屋に泊めてあげてよ」



舞ちゃんが思いついたことをそのまま口に出して、



「……はぁ!?」



店の奥に控えようとしていたナオくんが、慌てて舞ちゃんの方を振り返った。

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