第33話

ベッドの中で、友季の温かい腕に抱き締められたまま、舞はちらりとベッド脇の台を見る。



その上に無造作に置かれた、開封されたばかりの避妊具の箱を見た。



「……なに?」



舞の視線に気付いた友季が腕を伸ばし、その箱を台の引き出しの中に隠す。



「いっつもそこに入ってたの?」



舞のそんな質問に、



「……割と最近から、かな」



友季は気まずそうな顔をしながらも正直に答えてくれた。



「……私とするため?」



「他に誰がいんの?」



友季は今度は呆れた顔をしながら、舞の髪を優しく撫でる。



「だって……トモくん、私がいいよって言ってもなかなか抱いてくれなかったし」



毛布を口元まで引き上げてムスッとねる舞を見て、友季はまた困ったような表情を見せた。



「こういうのって、2人でするもんだろ?」



「……うん?」



「なのに俺の欲求のために、舞に怖い思いを我慢させるのって……俺はそんなの望んでないから」



友季の指先が、舞の髪をするすると通り抜ける。



「舞が、“俺とそうなりたい”って心から思ってくれるのをずっと待ってたんだ。だから、“いいよ”って言ってくれた時、本当はすげー嬉しかったけど、聞きたいのはそんな言葉じゃないって思ったら……出来なかった」



以前に友季から言われた、“舞を大事にしたい”という言葉の意味が、今やっと分かった気がする。

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