第26話

「……“バンソーコーのお兄ちゃん”よりは綺麗な響きだと思うよ」



何か他にいい呼び方はなかったのか、と今更ながらに思うから。



「確かに、すげーダサい響きだよな」



友季も思わず苦笑してから、



「なぁ、舞……」



友季にしては珍しい甘えた声で舞を呼んだ。



「今日はもう帰らないでくれ」



「えっ……?」



「舞と離れたくない」



友季にますます強く抱き締められて、舞は言葉を失う。



「ダメか?」



捨てられた子犬のような不安そうな目で見つめてくる友季に、ぎゅっと胸が苦しくなった。



ダメなわけなんて、あるはずがない。



「ううん。私も、トモくんのこと独り占めしたいもん」



友季の唇を奪い、彼の膝の上から動こうとしなかった愛華に対して、嫉妬してしまっていたのは事実だから。



「なんで急にそんな可愛いこと言うかな……」



友季は溜息をつきながら、舞の左肩にそっと顎を載せる。



「……襲うの我慢出来なくなりそう」



「……!?」



それは無意識に零れた本音だったようで、発言をした友季本人は、そのことに全く気付いていなかった。

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