第7話

「違う! 浮気なんかしてない!」



友季は即座に否定したが、



「……トモくんの中では、彼女以外の人とのキスは浮気にならないんだ?」



泣いている舞の言葉は、酷い冷静さを保ったままだった。



こういう時、きっと自分はヒステリックになるタイプだと思っていた。



実際に自分の身に起こってみると、案外冷静でいられるのだな、と非常にどうでもいいことを考えてしまう。



「……舞。俺は絶対に浮気なんかしてない。信じてくれ」



友季は真剣な眼差しで舞を真っ直ぐに見つめたが、



「友季ー? 早くこっち戻ってきなさいよー!」



不機嫌そうな女性の声が、それを邪魔する。



「……ちっ」



友季は突然、不快そうに表情を歪めて舌打ちをすると、



「少しだけ出かけてくるから、ちょっと待っててくれよ!」



自分の後ろに向かってそう叫んだ。



シューズボックスの上に置いていた車のキーを掴み、



「舞。もう遅いから、家まで送るよ」



外は肌寒いのに、薄着のまま玄関から出ようとする。



「……こんな遅い時間まで、女の人を家に招いてるんだ?」



友季を鋭く睨みつける舞に、



「舞……」



友季は困惑した表情を見せるだけで、何も説明はしてくれない。

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