第3話

「トモ、くん……」



角度を変えるために一瞬だけ唇が離れた隙に、舞が慌てて友季を呼んだ。



「うん?」



友季は、すっかり熱のこもってしまった眼差しで、自分の下にいる舞を見下ろす。



「その……私、トモくんとだったら、いいよ」



震える声と勇気を振り絞ってそう言った舞を、



「……」



友季は黙って見つめていたが、



「……んっ」



再び貪り食うようなキスを落とした。



しばらくしてから、そっと唇が離されて、ソファーの上から抱き起こされる。



「……舞を大事にしたいから、まだいい」



そのまま、友季にぎゅっと強く抱き締められた。



大事にしたいと思われるのは、とても嬉しいことだと舞は思ったのだが……



それと同時に、少し寂しい気持ちにもなった。



そんな複雑な気持ちを、きちんと友季に伝えることが出来ていれば、きっと喧嘩をすることもなかっただろうに、と――



後悔することになるのは、そんなに先の話ではない。

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