第33話
舞も一応は専門学校の授業でクレープを焼いたことはある。
その時も、渡された道具は竹串1本のみで、あまりの熱さに上手くひっくり返すことが出来ず、焦がしてしまった記憶がある。
何故フライ返しを使ってはいけないんだ!
と授業中はひたすら先生を恨んだものである。
もし就職したとしても、そこではきちんとした道具を渡してもらえるだろうと甘く考えていたので、先生と同じように竹串を差し出してきた友季に、舞は酷く落胆したのだった。
「……とまぁ、こんな感じで――って、鈴原?」
美しい焼き色の付いたクレープを木の板の上に上げた友季が、舞の顔を見て驚いた。
「大丈夫か?」
「……大丈夫です」
綺麗に焼ける自信がない以外は。
なんて言えるはずもなく、その言葉は無理矢理に飲み込んだ。
「じゃあ、やってみて」
友季に言われ、
「……はい」
舞はボウルに入っている生地をレードルで掬った。
とにかく、やるしかないのだ。
友季がしていたのと同じように焼いていき、竹串で生地の縁を浮かし――
「えい!」
熱いのを根性で我慢して、一思いにひっくり返した。
指先が後からじんじんと痛くなってくるが、そんなことは無視して、裏面にも薄く焼き色が付いたところで、また素手で摘んで木の板の上に上げた。
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