第31話
「……そっとしとくべきだよな」
やっと出した答えに、友季はどこか腑に落ちないながらも小さく頷いた時、
「えっ? まだ作り方を教わってないので、そっとしとかれても困るんですけど」
いつの間にか事務室の中に入ってきていた舞にそんなことを言われ、
「……!?」
友季は慌てて机の上の履歴書を引き出しの中にしまい込んだ。
「鈴原……ノックくらいしろよ」
思わず舞を鋭く睨んでしまったのは、友季の気まずさによるものであって、舞は決して悪くはない。
「えっ? ちゃんとしましたけど。お耳が遠いだけなんじゃないですか?」
舞がムッとしてしまい、
「……」
友季の願いも虚しく、やはり舞との空気は険悪になってしまった。
10歳も歳の離れた女の子の扱いって、本当に難しい。
そこまで考えて、
(……そうか。10歳差なのか)
先程の履歴書を見て知った事実。
履歴書なんて見なくても、舞があの時の彼女ならば、年齢を逆算すれば分かることなのに。
はっきりと目の前に文字として出されると、急に現実味を帯びてくるから不思議だ。
「あ、計量は――」
「終わりました」
苛立っているのか、友季の台詞の上から被せるようにして答えた舞に、
(完全に嫌われてるよな、俺)
友季は顔には出さなかったが、心の中では激しく落ち込んだ。
そもそも、ここ数年の間では女の子から嫌われたことなど全くなかったから。
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