第27話

「あっ……ごめん。そんなつもりじゃ……」



傷付いた表情の直人を見て、舞は弁解しようとあたふたし出した。



「……舞さ……昨日の夜のこと、何か覚えてる?」



直人は気まずそうに舞から顔を背けて、そんな質問をぶつけてきた。



「スマホで漫画読んでて、気が付いたらベッドで寝てたから……」



「……そっか」



小さく頷いた直人の態度は、愛嬌のある彼にしては珍しく素っ気なくて。



「運んでくれてありがとね。重かったでしょ?」



舞のそんな言葉に、



「ううん。全然」



直人はやっと顔を上げて、舞を見る。



「定食屋のバイトしてた時に米俵運ばされたことあるけど、それに比べたら余裕かな」



そんなことをさらりと言ってのけた直人は、意地悪そうにニヤリと笑っていて。



「私と米俵を同じ扱いにするなー!」



ムッとした舞が、直人の上腕にパンチをお見舞いした。



「ハハッ!」



楽しそうに笑う直人は、舞のよく知るいつもの直人で。



慣れない環境と職場で、変な夢を見てしまっただけなのだと。



この時の舞は、それだけのことなのだと本気で信じて疑わなかった。

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