第31話

騒がしい昼休みがやっと終わり、



「疲れた……もう帰りてー」



5限目担当の教師が来るまでの束の間に、頼斗がぐったりと机に突っ伏した。



そんな頼斗を、隣の席の希美は哀れみの眼差しで眺めつつ、



「……」



声をかけられずにいた。



もしかすると、頼斗がフリーであることを言いふらしたのは希美だと疑っているかもしれないから。



「くっそー……あの女、ぜってー許さねぇ」



頼斗の恨み節に、



「!」



希美はびくっと体を強ばらせた。



「梅本も、ごめんな」



頼斗は希美の様子に気付いているのかいないのか、突っ伏した姿勢のまま、首ごと希美の方を向いた。



「え……?」



「俺のせいで、席追い出されて」



「あ、ううん……気にしないで」



希美は慌てて首を横に振った。



「でも、誰とも付き合う気はないなんて、急にどうしたの?」



ついでなので、気になっていたことを訊ねてみた。



「んー……何か面倒になって」



頼斗は曖昧に答えた後、



「でも梅本が俺と付き合ってくれるって言うなら、喜んで付き合うけど」



悪戯っぽい笑顔を希美へと向けた。



「桐生君……」



「うん?」



「チャラい」



希美の切って捨てたような一言に、



「ははっ……俺もそう思った」



頼斗は苦笑した。



そんな頼斗の表情に希美はドキッとしてしまったのだが、



「……」



それを頼斗に勘づかれたくなくて、頼斗からプイッと顔を背けた。

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