第35話

姫花の部屋に案内された唯は、



「……うん。凄く美味しい」



姫花の淹れてくれたお茶を飲んでほっこりしていた。



「……」



本当に美味しそうに飲んでいる唯に、姫花はどんな顔をしていいのか分からず、気まずそうに黙っていた。



姫花は基本的に、容姿以外のことで人から褒められることに慣れていない。



何と返事をすればいいのか、全く分からないのだ。



「……」



自分の部屋なのに居心地悪そうにしている姫花の様子に、当然のように唯も気付いていた。



姫花のこのリアクションは、唯のせいでもあったりする。



姫花が嫌がると分かっていて、わざと容姿ばかりを褒めてからかっていたのだから。



本当は他にも褒めたい部分はいっぱいあったはずなのに、照れくさくて言えなかったのだ。



これからは、姫花に対してもっと素直に接していこう。



そう決意した唯は、勇気を振り絞って口を開く。



「こんなに美味しいお茶なら、毎日飲みたいくらいだ」



かなり遠回しな、プロポーズのつもりだった。



「唯の好きな茶葉を教えてくれたら、毎日ボトルに淹れて手渡すけど?」



至極真面目に返された。



「え……あ、うん。そうしようかな」



全く伝わらなかった……何だよ、くそっ。

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