第32話

頼斗は姫花と違って成績優秀ではあるが、教え方がとにかく下手くそ。



しかも分からないから質問しているのに、たずねるとめちゃくちゃ面倒くさそうな顔をするし、答えを間違えるとボロクソにののしられる。



しかも、ちゃっかりと“授業料”も請求してくる。



頼斗コイツには、二度と頼みたくない。



「宿題って、いつまでなんだっけ?」



扉の向こうにいるので顔は見えないが、頼斗がニヤニヤ笑っていることくらい、双子なのでよく分かる。



「明日まで……」



「……で? 唯を家に入れる? それとも追い返す?」



何の誘導尋問なのか?



「……私が出る」



その答えしか、用意されていないではないか。



「唯のヤツ、下で待ってるぞー」



何故か楽しそうな様子の頼斗が、非常に腹立たしい。



いつかヤツの弱みを探って握り締めてやるのが目標だ。



そんな決意を胸に、姫花は唯の待つ正面玄関まで急いで向かった。



唯は姫花の姿を見つけるなり、



「姫花、ごめん!!」



深々と頭を下げた。



「あっ、ちょっとこんな所でやめてよ!」



今は誰もいないが、いつご近所さんに見られるとも限らない。



本当は部屋に入れてあげたいが、感じの悪い頼斗に話を聞かれたくないので、それが出来ない。



「でも、俺、どうしても姫花に謝りたくて……」



シュンと項垂うなだれる唯が、なんだかいつもより小さく見えて、姫花は少しキュンとしてしまった。

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