第29話

そして、現在に至る。



『うわぁ、乙女心ズタズタじゃん……』



「……お前は乙女心が理解出来るのか?」



『これだから、中途半端にしかモテない男は……』



電話の向こうで頼斗が、やれやれと首を振っている光景が見えたような気がして、唯はムッとする。



「じゃあ、お前ならああいう時どうする?」



『うーん……俺の場合、黙って抱き寄せれば殆どの女子は期待して目を閉じるからなぁ……』



……アドバイスではなく、ただのモテ自慢だった。



「お前、いつの間に彼女いたんだ?」



『常に誰かしらはいるぞ? すぐ振られて別れるけど』



「振られるのか? お前が?」



それは意外だ。



『告白してきた子はとりあえず全員OKするんだけど、俺は好きじゃないからゲームとか優先するし……私とゲームどっちが大事なの! って』



「……好きでもないのに付き合うのか」



姫花の双子の弟とは思えない程のクズじゃないか。



『相手をよく知りもしないのにお断りするのって、相手に失礼だろ?』



「……おぉ……」



変な所だけ律儀だ。



だからモテるのか?



この話を聞いている限りでは、別に羨ましくはならないが。

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