第33話

そんな中、



「スー……大丈夫?」



沙那だけが冷静に純に声をかけた。



「え? あぁ……」



純はようやく我に返り、朝日を睨むのをやめた。



「ええなぁ、可愛いなぁ」



朝日が沙那を見つめて言い、



「……お前、それ以上沙那のことを見たら、この場で目玉をくり抜くからな」



純がまた鋭く睨みつけた。



そして、



「……榊」



次に祐也の方を見た。



「え?」



祐也の中の“嫌な予感センサー”が異常察知の警報を鳴らす。



「教授に頼んで、こいつを俺たちの教材にしよう」



「……」



発想は医大生っぽいが、未来の医者が発していい言葉ではない。



「やだよ。俺、殺人犯になるのなんて」



祐也はイヤイヤと首を横に振り、



「こいつは人じゃなくて教材モノだから問題ない」



純はビシッと親指を立てて、



「ヤるなら、あたしから見えない所で勝手にやってね。関わりたくないから」



陽は顔を背けながらお茶を飲んだ。



それを苦笑しながら見ている沙那に、



「いっつもこんな感じなん?」



朝日が訊ねた。



「はい」



沙那は頷いたが、



「沙那に話しかけるな」



純が慌てて沙那の体を抱き寄せた。

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