第30話

「……何故、お前がここにいる?」



とある日のお昼時。



もうすっかり通い慣れてしまった大学の食堂で、ざる蕎麦の載ったトレーを持った純が、テーブルの一角で立ち止まって眉間に皺を寄せた。



「お腹空いたから、お昼食べに来てん!」



何故か、そこに朝日が座っていた。



純と同じざる蕎麦を、既に半分程食べている。



「お前の腹の虫なんざどうでもいい。何故この大学内にいるのかを聞いている」



「ここの食堂って、一般人も食べに来てええんやろ? 俺、大学の中って入ったことなかったから、新鮮でおもろいわー」



聞いてもいない身の上話まで聞かせてくれた朝日は、またズルズルと蕎麦をすすり始めた。



「えっ? 瀬戸さん?」



純より少し遅れてやってきた沙那が、朝日を二度見してから首を傾げた。



「あっ、沙那ちゃーん」



途端に朝日は嬉しそうな笑顔を沙那へと向けた。



「俺の隣に来てー」



「え……」



戸惑ったように少し身を引く沙那と、



「……」



無言で朝日を睨みつける純。



そして、



「え? 誰? 知り合い?」



沙那より更に遅れて来た陽と、



「うわっ、何か面倒くさそうな空気漂ってんな……」



露骨に嫌そうに顔を歪めた祐也がやって来た。



「何や、純って意外と友達おるんやなぁ!」



朝日だけは、ずっと楽しそうにニコニコと笑っていた。

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