第28話

何がそんなに面白いのかがよく分からないが、朝日はとても明るい性格のようだ。



「沙那ちゃんやな。気に入ったし覚えたでぇ」



朝日は、沙那に向かってウインクした。



それを見た純は、盛大に舌打ちをする。



朝日にだけは、沙那を会わせたくなかったのに。



結局は、沙那まで狙われることになってしまった。



「純を落とそうと思てたけど、純から沙那ちゃんを奪う方が面白そうやわ」



朝日は舌なめずりをしながら、沙那を上から下までじろじろと眺めた。



「……」



そのいやらしい視線に、沙那はゾッと背筋を震わせる。



「素直に俺の誘いに乗っとけば良かったって後悔させたるから」



朝日は鋭い眼差しで純を一瞥いちべつすると、



「沙那ちゃん。ほな、またね」



沙那の左手を無理矢理掴み、その甲にキスを落とした。



「!?」



驚いて、咄嗟に手を引っ込める沙那。



「瀬戸っ……お前!!」



純は朝日の胸ぐらを掴んで、廊下の壁に力任せに押さえ付けた。



その瞬間、



「ちょっと桐生! 何してるの!!」



その音を聞きつけた三上 叶和子とわこが、慌てて廊下に出てきた。



三上の声で、



「……」



純は朝日から静かに手を離した。



だが、朝日を鋭く睨み続ける。

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