第26話

「……男性が、お好きなのですか?」



沙那は言葉を選びながら朝日に質問した。



「あー、ちゃうねん、ちゃうねん。俺、バイやから」



「……バイ?」



沙那はことりと首を傾げる。



「両性愛者や。人を好きになるのに性別なんか関係あらへん」



朝日の言葉に、



「……何か、深いですね」



沙那はしみじみと頷いた。



「沙那。こんな話、真剣に聞く必要はないから」



純は慌てて沙那の手を引いた。



「純はそう言うけどよぉ。その……沙那ちゃん言うん? が、実は男やったって分かったら、それでも好きやないって言えるんか?」



そんな朝日の言葉に、純はぴたりと動きを止めた。



沙那がもし、実は男だったとしたら……?



そんなことはありえないが、もしそうなら、



(――それでも、好きな気持ちは変わらないかもしれない)



そう思ってしまう自分がいたりする。



「……」



何も言い返せずに黙った純に、



「ほれ、見てみぃ。そーゆーことやねんって」



朝日は満足げに頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る