優色。

第31話

祐也とは、もうダメなのかもしれない。



そう思ってしまうようになったのは、もしかすると大学の入学式の日からなのかもしれない。



沙那は、祐也のアパートから逃げ帰ってきたあの日以来、祐也とは全く連絡を取り合っていない。



しかも、たまに大学のキャンパス内で祐也の姿を見かけても――



どういうわけか、その祐也の隣にはいつも、派手な女の子がいる。



それも、毎日違う女の子。



沙那とすれ違っても、沙那の方を見向きもしてくれない。



……やっぱり、もうダメなのかもしれない。



悲しいというよりは、寂しさが強いような……



寂しいというよりは、悔しいような……



悔しいというよりは、やっぱり悲しいような……



今の沙那には、しっくりくる感情の表現が全く見つからなくて、そんな無意味な思考を延々と巡らせている。



「沙那……粉チーズかけすぎじゃない?」



沙那の向かいの席で、スプーンにカレーライスを山盛りにすくった陽が、沙那にそう問いかけた。



「へっ……?」



沙那が慌てて自分の手元を確認すると、そこには粉チーズにより真っ白くなってしまったトマトミートパスタ。



「あぁっ!!」



沙那は手にしていた粉チーズの容器を、慌ててテーブルに置いた。



と同時に、テーブルの上の食器たちがカチャンッと音を立てる。



ここは、大学構内にある学生食堂。



そして、沙那の周辺には物凄いチーズ臭が漂っていて、皆の眉間には皺が寄る。



そんな、ちょっと騒がしいお昼時。

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