第29話

沙那の家を出た後、純のスカイラインは祐也のアパートへと向かった。



「……何の用だよ?」



ローテーブルに向かい合って座り、かなり不機嫌そうに顔を歪める祐也に、純はその蒼い瞳を細めた。



そして、単刀直入に問いかける。



「お前、沙那に何したんだ?」



“沙那”という名前を聞いた瞬間、祐也の目つきはキッと鋭くなる。



「何? 沙那から俺の悪口を書いたLINEでも届いたわけ?」



そんな祐也に、純は眉間にしわを寄せる。



「何をしたんだって聞いてるんだ」



「……その前に、俺も聞きたいんだけど」



と祐也は純に挑戦的な目を向ける。



「何だ?」



「お前、沙那のこと好きなんだろ?」



瞬間、純の眉がわずかながらにピクッと動く。



「……」



しかし、純は感情の読めない蒼い瞳で、真っ直ぐに祐也を見据えた。



「……お前は好きじゃないのか?」



そう問い返してきた純に、祐也は驚いたように目を見開く。



「……否定しないのかよ」



そして、小さく舌打ちをする。



純は相変わらずの無表情のまま、



「お前が沙那を大事に出来ないなら、俺があいつを幸せにしてやる」



祐也に堂々と宣言した。

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