第27話

「落ち着いたか?」



沙那の部屋の中で、純はずっと沙那の頭を撫で続けていた。



それは、異性を扱うような雰囲気のものではなく……



まるで妹をなだめるような、そんな雰囲気。



だからこそ、沙那自身も、安心して純の隣にいられるのかもしれない。



これでもし、抱き締められたりしたら、沙那はもう二度と男の人を信用できなくなっていただろうから。



「うん……ありがと」



沙那が目にハンカチを当てながら答えると、純は小さく溜息をつく。



「……彼氏以外の男に、あまり涙は見せるなよ?」



「……え?」



「榊が聞いたら、いい気がしないだろ?」



「……」



沙那は、思わず俯いて黙り込んでしまった。



じゃあ、その彼氏に泣かされた場合は、一体どうすればいいんだろう?



そう言い返したくても、それを純に言うのは、何だか八つ当たりのような気がして……



「……」



やっぱり、黙り込むことしかできなかった。



そんな沙那を、純は呆れたように笑う。



「そんな膨れっ面してたら、そんな顔になるぞ?」



「なっ!?」



沙那ががばっと顔を上げると、その視界は何故かピンク色の何かで埋め尽くされていて……



慌てて後退りして“それ”から離れると――



純が、沙那に向かってピンク色の小さな紙袋を突き出していた。



「これやるから、元気出せ。な?」



「……」



何もそんな目の前に突き出さなくったって……



そう思いつつも、その言葉を飲み込んだ沙那は、差し出されたそれを恐る恐る受け取る。

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