第25話

連れて行かれたのは、祐也の住んでいるアパートの一室。



玄関の扉を閉めるなり、沙那は突然祐也に、扉へと押さえつけられた。



「痛っ……!」



「沙那はさぁ……俺よりも桐生の方がいいわけ?」



「……え?」



わけが分からず祐也を見上げると、そこには顔を険しく歪めている祐也の姿。



祐也のそんな顔を見たのなんて初めてな沙那は、ただひたすら体を震わせるばかり。



「……ユウ、怖い……」



「話を逸らすな」



言いながら、沙那の肩を掴んでいる手に力を込める。



「俺のこと、好きじゃなくなったのか?」



そんなわけない。



沙那にとって、祐也が一番大切なのだから。



でも、



「……こんなに怖いユウはイヤ……」



それが、沙那の正直な気持ち。



「……俺は、こんなに沙那のことが好きなのに……」



祐也は、沙那を一度鋭く睨みつけると、その唇を無理矢理奪った。



「んっ……!!」



沙那は、祐也の胸を両手で押して、祐也を懸命に拒む。



しかし、拒めば拒む程、祐也のキスは噛み付くような激しいものになっていく。



祐也が、沙那のブラウスの上から胸を触り始めた。



男の人の力には、どうやっても敵わないんだ……



そう観念した沙那は、祐也を拒むことを諦めた。



その代わりに、沙那の瞳からは涙がとめどなく溢れてくる。

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