第8話
「颯っ!!!」
たった数秒だと思う。こいつに見惚れていた俺は側近の透(とおる)の怒号で意識を戻した。
「若!!透さん!!こちらにっ!」
その声の方へ急いで足を進め、前後共に傷のついた車に女も横抱きにしたまま乗り込む。その後に続き透も急いで乗り込んできた。
「秋(アキ)病院だ。
山岸のとこに行ってくれ、急げ」
「はっ!」
俺が命令すると、運転手の秋はいつにない急発進で道を縫って進んでいく。
そんな中で明らかに顔色も呼吸も悪くなっている腕の中の女…
体の冷たさはこの寒さからではないことは確実で。こいつを抱きかかえることしか出来ない自分がなんだか無性に歯がゆかった。
「生きろ…」
無意識に出たその言葉。
猛スピードで走る車のエンジン音が響く車内、俺の呟きが余計に響いた気がした。
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