運命の出会い
第4話
視界から犯人の姿が消えた瞬間、制服を着た男性が横から全力で駆け抜けていき、私のカバンを拾った。
次に転がっているボールを手に取って近くにいる男の子に「ありがとう」と伝えてボールを渡した後に私の元へ来てカバンを差し出す。
「大丈夫? 怪我してない?」
彼は目にかかるほど長い前髪。
切れ長の二重。
鼻筋の通った鼻。
ほどよく厚みのある血色のいい唇。
シャープな顎。
まるでおとぎ話に出てくる王子様のような美しい彼に目線が吸い込まれた。
ーーこれが、彼と最初の出会いだった。
幸先悪いスタートだと思っていた矢先に訪れた幸運。
あまりにもドラマティックなシチュエーションに指先を絡めてうっとりと眺めた。
しかし、問題はここから。
カバンを受け取って「はっ、はい。ありが……」とお礼を言いかけた途端。
バサッ……
彼は突然空気が抜けてしまったかのように道端に倒れ込んだ。
それは、感謝の言葉を伝えようと思った矢先の出来事だった。
「えっ……、えええっ!!」
仰天した目のまま屈んで彼の肩を二回揺するが反応はない。
だが、安否が気になって諦めずに声をかけ続けた。
「だ……大丈夫ですか? どどど、どうしよう!! 生きてる? ……うん、脈はある! だっ……誰かぁーー! 彼を助けて下さい!」
何度も身体を揺さぶりながら辺りをキョロキョロして人の手を借りようと思って叫んだ。
すると、先程声をかけてくれた女性が戻って来て救急車を呼んでくれた。
それから5分もしないうちに救急車が来て数十分後に搬送されて行った。
人間界に到着してからドタバタ劇に巻き込まれてしまったせいか、ポカーンと口を開けたまま救急車を見送る。
救急車が視界から消えると握りしめているスマホのメロディが鳴る。
画面をタップすると、司令部からメッセージが届いていた。
『無事に人間界に到着しただろうか。君の人間界の名前は
ミーナはその場に佇んだままスマホをスライドしていくと、ターゲットの画像が添付されていた。
あれ……?
ここに写ってる人はさっきのひったくり犯からカバンを奪い返してくれた人だ。
滝原 夏都っていうんだ。
『ミッション完了時には、関わった人間の記憶を全て消去する。ターゲットに吸血した事も、その間起きた出来事も、君の存在も全て……。だから遠慮なくミッションを全うして欲しい。以上。健闘を祈る』
なるほど。
ミッション完了若しくは期日が来たら、人間界から私の記憶がごっそりなくなるという事か。
なら、難しく考えなくてもいいかもね。
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