第73話
「……これは…最上級魔法…?」
「まー、詳しいことは気にしねーで皆はゆっくり休めよ。魔王戦の時に眠くなっても知んねーぞ」
「ゆーしゃさんは呑気だねぇ。こんな魔王城の真ん前でぐっすり休めるわけないでしょお?」
アシンメトリーな濃い灰色の髪をした男――ルークスが頭の後ろで手を組みながらそう言った。
旅の途中で出会った、自称遊び人…だがどこか怪しい雰囲気を醸しているため俺は常にこいつには警戒している。
たまにふらっといなくなったりしているようだったし。
もしかしたら魔王の手先かもしれない、なんて。考えすぎか。
しかし本当にそうだとしたら厄介だ。遊び人、と言っているくせにその実力はズバ抜けているしな。
少し考えた後、濃い灰色の髪をしたそいつに俺は返答する。
「今日は俺が見張るって。だから、皆は安心して寝てていーぞ」
「そんな!勇者様にだけ見張りをさせて寝るなんて!私が代わりに見張ります!!」
「ばか。それじゃ意味ねーだろ」
女戦士の声を皮切りに次々と反対の声が上がる。
ちっ、せっかく俺が珍しくめんどくせー役引き受けてやろうってのに。
あんま荒っぽいことはしたくねーけど…口で納得させられそうにねーし。
俺は無詠唱で眠りの魔法を発動した。
「あっは、さすがゆーしゃさんは違うねぇ」
「なっ…なんで起きてるんだよお前?」
「ほら~俺、遊び人だから、状態異常系の魔法には強いんだしぃ」
遊び人にそんな特徴があったのか。知らなかったんだが。
そういえばこいつと二人きりで話すのって今さらだが初めてじゃないか?
いつも俺の周りには誰かしらしたし。
周りが暗いせいかルークスの薄桃色の瞳がとりわけ光って見える。
「……じゃあちょっと見張り頼んでもいいか?俺はちょっと…水組んでくる」
「ん。りょーかぁい」
なんとなく身の危険を感じ取った俺は近くにある泉へと向かった。
勿論、魔法でルークスを監視したままだが。
なにかおかしなことをしだしたらすぐ戻れるように。
そういえば明日で俺の旅は終わりなのか。
…別に不安なんてない。俺もみんなも、十分に力をつけたはずだ。
魔王にだって勝てる。
泉に着いた俺は水をすくい顔を洗った。
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