第72話
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「クロノス~、こんな瘴気の強いとこで寝られないよ~」
「んなこと言ったってもう暗いし俺が眠いの」
「ゆっ、勇者様はこ、こんな魔の瘴気が強いところで寝られるというのですか!?明日はついに魔王との戦いなのですよ!?」
魔法使いがガミガミぐちぐちと俺に文句を言っているが、この長い旅でそれにも慣れた俺は緩慢な動きで地面に寝転がる。
あいつと俺は多分一生相容れねーなあ。つーか無理。こっちから願い下げだ。
だいたい、決戦の前の日こそちゃんと寝ねえとだろーがよ。
魔王と戦ってる時に眠くなったらどーすんだよ。欠伸してる間にやられちまうだろが。
……でもま。しゃーねえか。
俺には強い聖の加護があるから魔の瘴気程度どーってことないが、他の仲間たちはそうじゃねーし。
寝転がったばかりの重い体を起こす。
「はい、勇者と愉快な仲間達集合ー!」
「その呼び方やめてください、不愉快です。何度言ったらわかるんですか」
「ふはは、悪いって」
俺の言葉に仲間たちは不思議そうな顔をしながらも俺の前に集まる。
…なんだかんだ言っても結局俺の指示には従ってくれるんだよな。
そんな何気ない仲間たちの行動になんとなく嬉しくなる。
ほんとはこいつらも危険な目に合わせたくなんかねーけど…魔王に俺一人で太刀打ちできると思えねえ。
いくら勇者に魔王を倒す力があると言っても結局俺が先に死んでしまえば意味がないからな。
だから、俺は――
「ちょっとぉ~なにぃ?オレたち呼んどいて放置な訳ぇ?」
「ああ、悪い悪い。お前らに聖の加護結界をかけようと思ってな」
そう前置きし、俺は全員を聖の加護結界で覆った。これで魔の瘴気はいくらか抑えられるだろう。
ここのところは魔族や魔物との戦いも多く過酷になってきたから疲労はそうとう溜まっていると思うしな。
さすがに今日くらいはゆっくり…とはいかないかもしれないが、少しは快適に過ごして欲しいと思う。
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