第6話
あの日気付いたら、一時間以上もそこで筆談ならぬスマホ談をしていたようだ。
それに終りが訪れたのは。
彼女のお腹がぐうっと鳴ったこと。
それに僕が気付いて笑ってしまうと。
――お腹が空いたのでご飯食べに行きます、さようなら!
笑った僕に腹が立ったのだろう、ぷうっとふくれて見せたその顔があまりにも愛くるしくて。
――僕もお腹が空いたので一緒に行ってもいいですか?
とお腹をさすって見せたら。
――私の行きつけのカフェが近くにあります、オムライスが美味しいんです、後カレーも。あ、パスタも。
――もうカフェじゃなくって軽食屋だね、楽しみです。
彼女は何度も大きく頷いて、確かにそうだ、と言いたげに右の拳で左の掌をポンポンと叩いて笑ってた。
オムライスを食べる僕と、チーズを思い切りかけたボロネーゼを食べた彼女は、SNSのIDを交換した。
もっと話がしてみたかった。
お互い本が大好きで、好みも似ていたし好きな作家も似ていた。
同じ小説を持っていたり休日にまで本屋に通っていることや共通点がいっぱい。
僕がまだ持っていない小説の新刊を彼女が既に持っていたり。
逆に古すぎて探せなかった本を僕が持っていることを知って。
今度は貸し借りしようか、なんて笑った。
あの日の君と僕。
ほぼ毎日のように彼女と会い、気付けば季節は梅雨どき。
僕らはどこにいてもきっとお互いを探し合うくらいに仲良くなっていたと思う。
少なくとも僕の心はその優しい笑顔に触れるたびに、君という存在がどんどん大きくなっていった。
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