第5話

どれだけ歩いたかは分からない。


闇に浮かぶ木々のシルエットが風に靡いて揺れる。

時折獣の目が光る。




「…クロウ、この声はオオカミ?襲ってくる?沢山いるみたい…。」


ぐるぐると喉を鳴らし唸る獣達。

怯えるレシェは僕の腕に抱き付く。



低い唸り 鋭い牙と爪 幾つもの眼光

僕らは招かれざる客だ。



「怒れし異種の友よ 誓おう。

きみ達の何をも僕らは脅かさない。」


僕の声が森に響く。

それまで木々をなびかせていた風が止んだ。


水を打ったように静まり返って



「僕らはこの森を抜けたいだけなんだ。」



僕の言葉を聞き遂げ、獣たちは背を向けて立ち去った。

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