第9話
「乱暴するのが好きなのか、されるのが好きなのか」
全身が震えて
「分かったもんじゃねぇな。」
愉しそうな男の声がやけに遠くて
「どうなんだよ。牧野彩音サン?」
どうしてあたしの名前を?
問う余裕も無いままに、あたしは昇り詰めた。
「最っ低!」
「最高、の間違いだろ?」
ああ切れちまってる。
愉しそうに吐いて煙草のソフトパッケージを握り潰すと
缶チューハイの上で潰したらしいしけもくを指で整えて100 円ライターで火を点けた。
悦楽に呑まれて遂ぞ果てたあたしの身体は今、倦怠感に浸っている。
「吸わないでよ!」
「さっきは良いって言ってたからな。この良いは許可。」
鼻で笑うと紫煙を吐いた。
パンツ1枚の男は当たり前のように煙草をふかして居る。
身体の造形は割りと無駄が無く綺麗だ。
年は…あたしと同じ、30手前辺り。
…どうでも良いわ、そんな事。
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