第8話

塞がれる唇。ジョリジョリと顎に固い無精髭の痛痒さ。


捩じ込まれた舌はヤニ臭いのに、舌先の愛撫に抵抗を忘れかけていた。



「…うっ。」


その熱い舌を噛めば、呻いた男が唇を離した。


だけど痛そうにしたのは一瞬の事。



「ほら、呑めよ。」


また男は唇を抉じ開けると、生温い唾液をあたしに流し込む。

口に広がる鉄の味。

切れ長の二重が妖艶に笑む。


ゆるゆると腰を動かす男は唇を離して乳房にあてがった手に力を籠める。


片手はお臍から下に爪を滑らせて突起を引っ掻いた。



「ああっ…っ。」


身体中を電流が走り抜ける。飲み下せないでいた唾液を、口の端から垂れ流せば



その表情そそるな、なんて愉悦を浮かべる男。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る