第8話
千紗の部屋の隣りに、そしてほぼ同時に越してきた時雨は彼女の白い木製のシングルベッドに横たわる。
越してからのおよそ一年。当然となった。
怠惰の青年に少女が折れた。
互いに埋め合わせるように
そして温もりを知りたくて
そうして二人の中で二人だけの決まり事が生まれてきた。
例えば、出掛ける時はきちんと何処へ行くのか言う。
母子の様ではあるが、それは時雨が千紗を案じているのを彼女も分かっているから結ばれた決まり事。
時雨がバイト先迄迎えに来る事もそうだ。
はじめは車で来ていたが、インドアな時雨の事を思って千紗は徒歩にさせた。
でも流石に今日は悪い事をしたと思う。
「時雨…」
ごめんね、とは続かなかった。
そんな意味を成さないやりとりなど、時雨には面倒でしかないだろう。
生きることすら面倒な彼だから。
千紗は押し黙った。
二人、無言で
まだ止まぬ雨音に耳を傾けながら
眠り落ちるときを待った。
儚き雨傘 バニラ味(サイト転載であたふたしてる) @vanilla_flavor
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