第7話

「君は居なかった。」


切なげな瞳が千紗を射抜く。


濡れた髪を震わせて、寒い筈なのに

どうにかしてあげないと、そう思うのに。

千紗は微動だに出来なかった。



「…だって、学校が。今日は始業…。」

「焦った。」


小さな右手を捕まえた骨張った左手に力が少しだけ、籠められた。



「起こしたし、メールもした。」

「……とにかく…。」


真剣に紡ぐ時雨の瞳、黒目が闇を割く様に光った。



「心配だった。」


そんな時、千紗は呼吸が苦しくなる。



「…時雨。」


「風邪引くから、風呂に。」

「…時雨は?」


「嗚呼。一緒に入るかい?」

「入ったか聞いたんだよ!」


「さっき入ったから良いだろうか?」

「雨に濡れたんだから入って普通に!」

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