第2話

ごみ溜めさながらの散らかった床を認めた。


このベッドはまるで浮島のようだ。

そう思ったのは、いつだったか。


きっとまた叱られると、部屋を見渡し一人苦笑。


先刻貰い物の日本酒をひっくり返したせいで、その甘い香は噎せ返る程。

気怠い動作で仕方無く窓を開けた。



すん、と雨の香がしたのは気のせいか。

面倒だと考えるのはやめた。



着崩れた寝巻きの下

白い痩躯にうっすらと残る数々の紅い跡

構わずに腹を掻いた。



気に入りの納戸色に視線を流し


あれにしようか。

そう決めてからの行動は早かった。


衿が紺色の長襦袢を、上にその納戸色の着物(長着)を着流す。

紺色の千鳥柄をした帯を取り、片ばさみと云う帯結びをした。



そうして外界へ。


ゆらり、ゆらりと歩く。



誰かが言った。お前は根無し草の様な男だと。

言い得て妙だと、本人は納得している。


170丁度の身の丈は細く

纏うは何処か浮世離れした空気。



儚く危うげな男。



名は桐島時雨(キリシマ シグレ)と云う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る