第26話
「あらまぁ、珍しい。本当に皐月君と仲良くやってるのねぇ」
作業場から戻ってきたお母さんが、手で顔を扇ぐ私を見て、喜色満面な笑みを浮かべる。
頬が朱に色付いているであろう私の肩を叩いてニコニコと。
やけに嬉しそう。
しかし、嬉しくて笑っているというよりは、
仲良しアピール的には大成功。
だけど、素のイチャつきを見られたみたいで小っ恥ずかしい。
見られてはイケないところを見られた気分。
「……だから心配ないって言ったでしょう。家じゃ、いつもあんな感じなんだから」
「そうなの?だったら、いつもあんな感じでいればいいのに」
「そうは言っても。職場での線引きって結構難しいし」
レジの周りをいそいそと雑巾で拭きながら、お母さんに向かって口からデマカセを言う。
半分、願望みたいなモノだ。
実際に“そうだ”と胸を張って言える日がくればいいのにな、って願い。
ほんと、喧嘩しちゃったことも忘れて夫婦として歩き出す未来まで夢見てるんだから、今の私は余程、浮かれているらしい。
満更でもない顔をしている自覚はある。
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