第8話

そこについての不満は全くない。


日々、職人として腕を上げていく皐月を見ていると、やっぱりこの人を選んで良かったな、と思う。



だけど、私達が夫婦として成り立っているかと聞かれれば怪しいところだ。




だって、毎日帰りは遅いし、朝は早い。


休みも少ないし、まともに話せるのは寝る前の、ほんの数時間だけ。



ほぼ、すれ違い生活。




一緒に住んで、一緒の職場で働いているのに、何故だか他人よりも距離が遠い。


まるで見えない壁に阻まれているかのよう。



おまけに言い合いも多いし、喧嘩はしょっちゅう。


夫婦らしいことはいまだ何1つしていない。




こんな状態で、いつか子供を持つ日とか来るんだろうか……。



私の方はそれなりに欲しいと思っているけど、皐月はそうじゃないんだろう。



待てど暮らせど『仕込みがあるから』と1人でさっさと寝てしまう。



もちろん寝室は別。


鍵なんて閉まっていないのに1度も開いてくれやしない。

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