第28話

眼鏡か…。確かに文字を書く時だけ掛ける。


学生の頃からずっとそう。


ただ、それって…。


現状、家と職場だけ。




「あ、大丈夫。心配しなくていいよ。楓さんに誘われたとかヤッたとか皆に自慢したりしねーから」


「東郷…」


「まぁ…。時々、機嫌を取ってくれないと口が滑るかもだけど」




脅すようなことを言って、ニコニコと笑いながらあたしの顔を覗き込む東郷の目。


全然、笑っていない。




「ねぇ、その皆ってまさか…」


「うん。脅してごめんね。でも、一晩だけとか無理だし。そこはもう責任を持って相手してよ」


「嘘でしょ」


「本気で」


「はぁ…」


「だから聞いてあげたじゃん。俺と寝て後悔しないかって」




突き落とすように囁かれて血の気が引く。



冷や汗まで出てきた。


頭の中のファイルを1枚ずつ捲くっても全然顔が出て来なくて尚更焦る。



だって、まさか、そんな、嘘…。

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