第27話

「……ごめん。いつ会ったっけ?」


「ほぼ毎日のように会ってるよ」


「毎日…?」


「まぁ、関わり薄いし、俺が見てるだけだけど」




無性に怖くなって恐る恐る聞いたあたしに東郷は明るく答えた。


明るすぎる声で。


異様なくらいの明るさ。


クスクス笑って若干ホラー。


毎日見てるって…。


いや、何か怖いし。



誰?




「狡いよなー。やっと振り向いてくれたと思ったらヤんなきゃ振り出しって。そんなん断れねーじゃん」


「……う、ん。ごめん」


「まぁ、騙して悪かったけど…。そうでもしなきゃ逃げられそうだったし」


「そう、だね…」


「正直、楓さんとヤったと思ったら心臓が死にそう。マジで見てるだけの存在だったし」


「あの」


「ちなみに今日の格好よりいつもの方が好み。文字書くときだけ眼鏡を掛けるのとか、すげぇ好き」


「な…」



抱き締める腕に力を籠められて背中がヒヤリとする。


逃がさないと言われているようだ。


ってか絶対にそう。


何だかよく分からないけど、交渉に入ろうとされている。

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