第28話

貴ちゃんは村田が男だと知らない。


嘘を吐きたかったわけじゃないが『友達の家にいる』と言ったら、勝手に女友達だと思い込んだ。



そこから、ずっと勘違いしたまま。



疑いもしない。




私も私で村田を取り上げられるのが嫌で否定せずにそのままでいる。



だって、貴ちゃんは束縛が激しい。



自分の浮気は許すけど、私の浮気は許さない。



村田が男だとバレたら確実にボコボコ。



関係を切らされるに違いない。



だから村田の家にいる時に貴ちゃんから電話が掛かってくると村田は口を閉じる。



初めて貴ちゃんから電話が掛かってきたとき、“絶対に声を出しちゃダメ”って私が村田に言ったから。



それからずっと村田は私が言った約束を守り続けている。



貴ちゃんから電話が掛かってくると何も喋らない。



口を閉じて、ひたっすら自分の気配を消してる。



今だってキッチンから出てきたけど、無言。



走っていった猫と玩具で遊んでる。

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